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自動車競技のサーキットで実況中継の通訳

通訳の仕事といえば重役会議とか国際コンファレンスといった硬いお仕事ばかりだと考えていませんか?もちろん仕事ですから一生懸命やることには変わりありません。だけど、これからご紹介するアサイメントとはちょっと今までとは違ったものでした。

D1グランプリって聞いたことありますか?もしご存知の方は、かなりのクルマ通ですね。そう…、これは自動車競技です。D1のDとは“ドリフト”を意味します。従来の自動車競技といえば「速さ」を競うものでしたが、D1は「速さ」も大切なのですが、それプラス、クルマをドリフト(横滑り)させながら如何に美しく最高のテクニックを使ってコーナーを抜けていくかを競う日本で始まった競技です。もちろん競技ですから厳しいルールが設けられていますが、規定の周回をした後、審判団の独断でもう一度競わせたり、または、観衆のアンコールに応えて再度競い合ったりと、観衆は飽きることなく声援できる新しい形のモータースポーツだと言えるでしょう。アメリカ開催は今年が二度目の開催ですが、今回は年間シリーズの一戦目ということで、昨年とは違った緊張感があったようです。

さて、スタッフのひとり山田さんは英語に堪能ですし、こんな場違いのところで通訳の私の仕事は?というと、一日目ははっきり言って何もしませんでした。それではなぜ?と思われるのは当然でしょうね。実はスタッフの方の計らいで、「今日はまず雰囲気に慣れて頂ければ…」というご親切な言葉でした。

そして、ブリーフィングでは、本番の打ち合わせがあり、通訳の仕事は、今年からスポンサーになったタイヤメーカーのGOODYEARのスタッフについて英語で放送される実況中継の通訳をするのが役割でした。第一日目、ブリーフィングも終わりサーキットでは、いよいよ練習が始まる時間になりました。ワクワクドキドキしながらコースに着いたとき私を待ち構えていたのは強烈な洗礼でした!!レースカーが私の前を走り去ったとき、「私、生きて帰れないかも?」と真剣に思いました。だって、レースカーが猛スピードと爆音とで横っ飛びになって私に向かってくるのです。何とか私の目の前を通り過ぎ、「助かった!」と神様に感謝した瞬間、今通り過ぎたクルマから放たれた細かく引きちぎれたタイヤのクズが頭からバサーッ…、洗礼を受けたのです。

二日目、本番の日は朝早くからたくさんの若者が集まっていました。さあ、本番です。こういったアサイメントでいつもの業務と違うことは、実際にどんなハプニングが起こるかわからないこと。やはり“ハプニング”ありました。前日から危惧されていたことでしたが、Media Pass つまりフォトグラファーにこのPassがないとサーキット内に入って迫力のある写真が撮れない。せっかく日本からこの為に飛んできて観客席から写真を撮っていては、それこそ絵になりませんよね。ここは「私の腕の見せどころ」とばかり、今までの経験と持ち前の“あつかましさ”で頑張りました。結果はめでたくサーキット内に入りフォトグラファーとしての手腕を存分に発揮していただきました。

場内放送の通訳はというと、非常に聞き取りにくいので苦労しましたが、この日までレース関連の用語を主人にマンツー(ウー)マンで教えてもらって勉強した甲斐があってか、アナウンサーのウィットの効いた英語にも動じることなく対応したと思いますが???、如何でしたでしょうか…。まだ、クライアントさんのフィードバックを頂いていないので実際のところは不明ですが。

最後に、このお仕事をさせて頂いて感動したことをお伝えしたいと思います。
多くの、いわゆる世間一般の人から見ると、D1という競技が「暴走族とどこが違うの」というかも知れません。実際に出場選手の中にはそういった経験をもった若者もいるのかも知れません。でも、たとえそういう選手がいたとしても、暴走族で終わってしまうのか、それとも自分の出来ることを"極める"まで如何に追求していくかによって、生きる価値が変わるという事を実際に目の当たりにして、今更ながら若い彼らに勇気付けられる思いでした。彼らの一生懸命一つの事に打ち込む姿、それはある光景を見たときに彼らのこのスポーツにかける信念を見たような気がしました。

D1GPオーガナイザーの土屋圭一さん
D1GPオーガナイザーの土屋圭一さん
スポンサーのステッカーを貼る高橋邦明選手
大切なスポンサーのステッカーを
レースカーに貼る高橋邦明選手
一人の選手が走行中ミスをしてコースの壁に激突しクルマの破片が散在した時、そのクルマのドライバーはもちろん、他の選手もコース上に駆け寄って細かく砕けた破片を一つ一つ丁寧に拾い上げて次のドライバーが安全に走行できるようにしたり、大切なスポンサーのステッカーを、選手が愛車のレースカーに不器用な手付きで、それでも心をこめて貼りつけるシーンを見ると、大きな音を立てて街中を走り過ぎる若者を暴走族と呼び、それを「負(ネガティブ)」と決め付けて何もしない人間より、一つのことに可能性をもった人間を暴走族で終わらせない為にその可能性を「正(ポジティブ)」に導く為に、こういった競技を考え運営実行していく人たちに敬意を表したいというのが、私の始めてのD1体験で得たものでした。

何万という観衆が喝采する光景に感動せずにはいられなかったし、喝采を受ける選手たちも、この感動がこれから生きていく上での糧になっていくと感じました。

青木静江

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